アルザスワイン特集

アルザス地方はフランス東部、ドイツとの国境沿いにあります。宮崎駿監督の「ハウルの動く城」のモデルとなったコルマールを中心に南北170kmにぶどう畑が広がっています。ヴォージュ山脈に守られているため、アルザス地方はフランス国内で最も降雨量の少ない地域のひとつです。*年間降雨量500~600mm
高貴品種と呼ばれる白ワイン用ぶどう6種と赤ワイン用として唯一ピノノワールが栽培されています。マヴィではビオディナミのパイオニアとして知られているメイエー氏のオーガニックワインを取り扱っています。1969年からヴィオディナミ農法を50年以上続けている畑から生まれるワインは、身に染みわたる洗練された味わいに仕上がっています。メイエーさんから2019年と2020年のヴィンテージ情報をいただきましたので、下記にご案内いたします。

ぜひお客様にご紹介ください。

2019年ヴィンテージ ~エレガンスに溢れたヴィンテージ~

2019年はフィネス、エレガントさ、精密さ、バランス、果実味など、出来上がったワインが並外れた品質となった特徴的なヴィンテージです。
この象徴的な1年を短く振り返ると2019年のアルザスは、一年を通して気候の変動が激しい年でした。
かなり暖かかった冬の後、3月から4月にかけて寒さと湿気が入り、5月は特に涼しく、6月中旬から始まった開花の期間は非常に長かったです。6月中旬以降は乾燥した天候が続き、7月には非常に高い気温となり、乾燥が続きました。
8月末には雨が降り、暑さと相まってぶどうはよく熟しました。

収穫は9月11日に開始しました。
高温で乾燥した穏やかな気候がぶどうを完璧に熟成させ、見事な糖度と酸度のバランスをもたらし、骨格のしっかりした熟成向きのワインや、繊細な果実味を持つ調和のとれたワインを生み出しました。
気まぐれな天候でしたが、それにもかかわらず、表情豊かなアルザスワインと素晴らしい品質のヴィンテージになりました。

リースリングは柑橘類や白い果実の上品なアロマがあり、すべてが繊細でエレガントな仕上がりになりました。
ミュスカは爽やかでフレッシュ、ピノ・グリはフルボディで美味、ゲヴェルツトラミネールは骨格がありスパイシーでフローラル、余韻に際立った新鮮さを感じることができます。
チェリーやラズベリーのアロマを持つグルメなピノノワールは、この品種のフルーティな表現と非常に繊細なタンニンのバランスが素晴らしく、フィネスを感じさせます。

2020年ヴィンテージ ~がっちりとボディのあるヴィンテージ~

2020年は、春から暑さと乾燥に悩まされた年でした。
開花は6月上旬から始まり、その後に非常に乾燥した暑い夏と秋が続きました。9月初旬に小雨が数回降り、ぶどうの樹に不足していた水をもたらし、より良い状態で果実を熟成させることができました。2020年の強烈な日差しと光は、果皮の成熟を促し、良好なフェノールの成熟に到達させました。ぶどうの樹には完璧な葉が茂り、開花やヴェレゾン(実の色付き)が早いなど、ぶどうが熟すための条件が揃いました。
収穫は早く、9月1日に始まりました。収穫時の衛生状態も申し分なかったです。
高温にもかかわらず、夏の間、驚くほど涼しい夜によってぶどうの酸が保たれたため、理想的な状態が保たれました。

アロマの豊かさ、コクのあるワイン、熟した酸味が2020年の白ワインを特徴づけています。
美しいミネラルと繊細な果実味があり、美味しくて飲みやすい仕上がりです。

リースリング、ピノグリ、ゲヴュルツトラミネールは高品質となり、フルボディで複雑、ビロードのように滑らかです。素晴らしいアロマの豊かさと驚くべき糖分とアルコール度数のバランスを持っています。熟成のポテンシャルが高いのも特徴です。

ミュスカはグルメで、ぶどうを噛んでいるような感覚を与えてくれます。
ピノノワールは、チェリーやブルーベリーなどの赤い果実のアロマに、スパイスの風味が加わっています。ワインは丸く、滑らかで、素晴らしい爽やかな酸味と熟し、コーティングされたシルキーなタンニンによってバランスが取れています。

アルザスワインのテイスティングコメント

テイスティングコメントはマヴィの塩澤 悠(ボルドー大学醸造学部公認テイスターディプロマ取得)が行いました。マヴィの公式試飲コメントですので、ぜひ店頭での説明にご活用ください。

①アルザス グランクリュ リースリング スピーゲル(29006)/現行ヴィンテージ2017年

【贅沢な瞬間を誰かと共有したい時に】

「まるで時が止まってしまったかのよう」、他の品種とは違うリースリングらしい香りと、さらにその奥に秘められたアロマの存在感に驚かされます。リースリング特有の香りはもちろんのこと、蜜が詰まって熟したリンゴにアプリコットや金柑など複雑に絡み合う香りはずっと嗅いでいたくなってしまうほど。アルコールのフワッと香るようなアロマではなく、熱が混ざることで存在感が増すアロマ。口に含むと、アロマに負けない重厚感があり、赤ワインに匹敵するほどの力強さ。強く、まっすぐ、重い感覚がここまであるリースリングは類を見ません。
太い線が一本長く続く印象の中で、酸味と共に味わいが広がり、それに寄り添うような甘さ、僅かな苦味と収斂性が全てをバランス良くまとめています。
この見事な調和が余韻として長く長く残ります。「こんなリースリングがあったのか!」という感動を与えてくれる、そんな1本です。

②クレマン ダルザス ロゼ 発泡(29014)

【シャンパーニュを超えるクレマンあります!】

このクレマンを口にした人は誰しもこう思うことでしょう。
「なにこれ、美味しい」。
完熟したフルーツのアロマに、リッチな樽や焼き立てのパンを思わせる食欲をそそる香り。口に含めば何とも濃厚で、それに合わせてくる酸や泡の感じ。もはや飲んでいるという表現を使うよりも、食べているという表現がぴったりなグルメな1本です。もしブラインドテイスティングをしたらシャンパーニュと間違えてしまう程、並大抵のシャンパーニュよりも美味しいとお勧めできる自慢のスパークリングワインです!

③アルザス リースリング (29001)/現行ヴィンテージ2019年

【比類なきアルザス産リースリング】

アルザスを代表するぶどう品種、リースリング。
人気が高い品種で、世界各地で栽培されていますが、冷涼な気候の丘陵の畑で育てられてこそ、そのポテンシャルを十分に発揮されます。メイエー家のリースリングは、まさにそのポテンシャルを余すことなく引き出しています。特徴的なミネラル感を持つぺトロール(石油香)、冷涼をイメージできるフレッシュな白い花々、綺麗に溶け込んでいる柑橘系の香り。口にした瞬間に感じる、無駄のない洗練された酸味。徐々に広がるとろみと口の中に広がる風味。飲み込んだ後にも、しっかりと残る余韻。軽やかな香りを放ちながらも、口にした時の味わいの重厚さにギャップを感じ、ドキッとさせられます。

④クレマン ダルザス ブラン ド ノワール 発泡(29020)

【メイエー家クレマンの真骨頂】

口にしたとき「これは凄い」と思わずため息が出るようなクレマン。
スパークリングワインから香るアロマを特定するのは、スティルワインより難易度が上がるのでアロマが偏らないように特に注意する必要があります。しかし、このワインのアロマの豊かさ、表現力の高さには驚きました。こんなに香り、こんなに広がりがあるスパークリング。ピノノワール単体で仕込んでいるのに、広がるアロマの豊かさは類を見ません。口当たりも申し分なく、キリっとした酸味が真っ直ぐに舌の上を走り、泡はどれも細かく繊細。ピチピチと弾けていく泡から感じられる僅かな苦みがまた心地よく、このワインの骨格を感じさせます。喉を通った後にも、いつまでも残る香りと後味。その長さに「まだ続くのか」と驚かずにはおれません。ひと口にどれ程の凝縮感があったのだろうかと振り返ってしまいます。クレマンでありながらシャンパーニュに並ぶ質、そしてそれを超える可能性を秘めており、こ本質的な味を求めた完璧な作品。真のグルメにこそ、堪能していただきたい1本です。

⑤アルザス ピノグリ(29002)/現行ヴィンテージ2018年

【若くても、熟成しても、満足できるピノグリ】

まず最初に感じるのは、上品で落ち着いたアロマたち。フルーツらしさを感じる熟した金柑やどこか紅茶を思わせる香り。上品さはアロマだけに留まらず、口に含んでもなお続きます。そしてしっかりとしたボディを感じます。ゆっくりと流れ込んでくるスッキリとした酸味と存在感のあるまろやかな口当たり、優しい甘さも心地よい。舌の上に残る風味はとても長く、飲んだ後でも満足感でいっぱいになります。聞けば2018年は、ピノグリにとっても生産者にとっても難しかった年だったそうです。しかしその難を乗り越え、メイエーさんは上質なピノグリを造り上げました。アルコール度数が14°とやや高めなので、長期に渡って保管することもできます。若いうちのフレッシュ感を楽しむもよし、熟成を楽しむために寝かせてもよし、そんな期待に胸を膨らませることのできる1本です。

⑥アルザス ゲヴェルツトラミネール(29005)/現行ヴィンテージ2020年

【まるで飲むバラの花束、アロマティックなワインの代表格】

コルクを抜いた瞬間から感じる芳香は、他に類を見ません。想像してみてください。満開の大きなバラの花束と、果汁が滴るほど完熟したライチ達。後に続くのは色とりどりの花に加え、ラベンダーやスパイスの香り。これぞまさに典型的なゲヴェルツトラミネール。香りの後には、それに負けない味わいが待っています。一度口に含めばパッと開く花のような味わいに、引き締まった酸味と、微笑みがこぼれてしまうような上品な甘み。スパイス感もそこに加わり、味わえば味わうほど複雑感が増していきます。まさにゲヴェルツトラミネールの語源であるスパイス(ゲヴェルツ)そのもの。余韻の長さも他の品種に劣らず、ゆっくりかつしっかりと感じられるのは流石です。ただ香り、ただ美味しいだけでなく、全体をまとめるように余韻が引き締めてくれます。ワインに身を委ね、ワインをダイレクトに感じたいときにこそ味わいたいこの作品。アルザスの魅力を出しに出し切ったこの1本をぜひともご堪能ください。

⑦アルザス ピノノワール(29003)/現行ヴィンテージ2020年

【透明感のあるピノノワール】

アルザス産のピノノワールから香るアロマや味わいは、ブルゴーニュのそれとはまた違う素晴らしさが詰まっています。カシス、ラベンダー、ブルーベリーとどれもフレッシュ感があるものばかりで、しっかりとした存在を感じられます。ピノノワールらしい、仄かなハーブ感もアクセントになっていて、複雑味が素敵です。口に含むと、その透明感に驚かされます。スルっと入ってきてから、口の中に広がる感覚がとても気持ち良い。開けたてももちろん美味しいですが、数日待つと更に美味しさを発揮します。ピノノワールの特徴である引き締まった骨格もあり、飲み終えた時の後味は見事です。余韻も長いので、ゆっくりと時間をかけて楽しめる1本です。

⑧アルザス エデルツヴィッカー(29013)/現行ヴィンテージ2020年

【アロマの共演!アルザス白品種の良いとこどり】

エデルツヴィッカー、ドイツ語で高貴な(エデル)、ブレンド(ツヴィッカー)を意味します。アルザスでは単一品種ワインに使われる、高貴品種と呼ばれるぶどうをブレンドして醸造した、なんとも贅沢なワインです。開けた瞬間に、満開の花畑にいるような香りと、美味しそうに熟した果実を切った瞬間のような香りに包まれます。スムーズに口に入った後、段々と広がる味わいに各品種の魅力を感じることができます。それぞれの個性に順番に魅せられているかのように、余韻は長く、最後はしっかりと引き締めてくれます。このエデルツヴィッカーに使われている品種は5種類(30%シルヴァネール、30%ピノブラン、30%リースリング、5%ミュスカ、5%ゲヴェルツ)です。シルヴァネールからは軽やかな果実の香り、ピノブランはワインにボディを与え、リースリングによって複雑味やミネラル感が加えられています。芳香力が強いゲヴェルツトラミネールとミュスカは少し抑えて醸造しており、全ての品種がバランスよく特徴を出し合いブレンドが完成しています。

⑨クレマン ダルザス 発泡(29012)

【本当に繊細な美しい泡♪】

メイエー家のクレマンは相変わらずシャンパーニュに並ぶ、いやそれ以上のクオリティだと感心してしまいます。栓を抜いただけで、ブリオッシュや焼き立てのパンを思わせる香りを感じ、もう少し探ってみるとリンゴやナシなどの香りがやってきます。例えるならば、まるで沢山のフルーツを混ぜて作ったパンのよう!口に含んだ感触も見事なもので、繊細な泡が本当にたまりません。今まで私自身が試飲してきたクレマンは、どこか泡が強すぎる印象がありましたが、このクレマンは本当に繊細。その繊細な泡に合わせて、酸味も綺麗で真っ直ぐです。後に続くほのかな甘みと骨格を支える苦み、それに続く収斂性はバランスが綺麗に保たれています。喉を通った後もスッキリとしていて残り香も長く、十分な飲み応えを感じます。バランスが良くストレートに美味しさが伝わる1本です。

⑩ビュル ド ミュスカ 発泡(29021)

【ミュスカの個性を堪能できるスパークリング】

ポンという音と同時に香る採りたてのマスカット、熟したオレンジや金柑の香りに加えて白い花の香りも漂ってきます。これらのアロマは途絶えることがなく、繰り返し上がってくる泡と共にずっと香り続けます。口に含むと存在感のあったアロマの雰囲気とは違い、最初は細くそれから段々と強くなり弾ける泡を感じます。懐かしい、口の中でパチパチと弾けるキャンディを思い出させてくれます。
泡と同時にしっかりとした酸味も感じられ、骨格をなす甘さとほろ苦さのバランスに感心してしまいます。すっきりしたスパークリングと思いきや、少しだけとろりとした余韻もあり、口の中で次々変わる印象に驚かされます。ミュスカと言っても様々な種類がありますが、メイエー家が栽培する「ミュスカ オットネル」という品種は、他のミュスカに比べて最も早熟で、冷涼な土地でも成熟します。
メイエー家ではスパークリングの要となる酸味を活かすために、スティルワイン用のミュスカより少し早めに収穫します。これも長い経験に基づいた技の一つです。香りの特筆すべきフルーティさ、スムーズな口当たりと弾ける泡の感触、飲み込んだ後に続く美味しさ、是非とも華やかなシーンで元気よく開けていただきたい1本です。

⑪アルザス ミュスカ(29004)/現行ヴィンテージ2018年

【ジューシーなマスカットを頬張ったような感覚!】

ワインを開けた瞬間から強く感じるマスカットの香り。一見シンプルに思えますが、意外にも沢山のアロマがあり、バラを始めうっとりとする花々の香り、多少のミネラル感など、周囲にあふれるような芳香に包まれます。口に含むと香りと味わいのギャップに、思わず笑みがこぼれてしまいます。芳醇な香りとは裏腹に、いざ飲んでみるとさらりとした口当たり。落ち着いてすっきりとした酸味、ミュスカらしさを感じるほどよい甘さとほろ苦さ。そして特筆すべきは、これでもかと続く後味の長さ。「間違えて香水を飲んでしまったのだろうか」と改めてグラスを確認したくなるほどです。ミュスカにはいくつか種類があるのですが、メイエーさんが栽培する「ミュスカ オットネル」という品種は、早熟で、冷涼な土地でも成熟します。ワインに味を表現させるのが難しい品種にもかかわらず、見事な醸造技術と経験でしっかりとした個性が感じられる味わいに仕上がっています。フルーティで華やかな白ワインを飲んでみたいという方にお試しいただきたい1本です。